ブログ~多様性の小径~


バングラデシュにおける教育の近代化と村社会

ALAMさんの来日とエリート主義への疑問

9月27日(火)から、JATA旅博2011(@東京ビッグサイト)のためにバングラデシュ政府観光局が推薦する旅行社の1つとして来日していた、バングラデシュ人のShahe ALAMさん(JABA tour)が今日、帰国した。

 

 

 

 

 

 

 

彼は今回、たくさんの出会いとお土産を置いていってくれた。

バングラデシュに2月に一緒に行った学生たちとの語らい、
旅博で出会ったバ国の観光局の職員との意見交換、ALAMさんの長年にわたる親交のある日本の友人達との出会い。

そして、今回、「オヨっ?」と思ったのは、ALAMさんが提示した教育の近代化に対する疑問である。

ALAMさんは、首都から車で3時間程のムンシゴンジ県ロホジョング郡スリナガル村出身だが、
そこに建てた、生徒数500人の私立SIZUE小学校の理事長でもある。

最初その学校は70人の生徒と十数人の先生とで始まったが、
その学校は今や、郡の中でのエリート校の1つにまで成長している。
全国統一試験の成績も相当に優秀であり、
郡には140以上の学校があるが、その中から奨学金をもらえる優秀な生徒をこの学校だけで20人以上排出している。

私も2回見学・交流に行っているが、生徒は、礼儀正しく勉強熱心で、知的な雰囲気を醸し出していた。

 

 

 

 

 

 

 

しかし、そんな優秀な学校の理事長であるALAMさん自身が、
詰め込み教育で「ガリ勉」を作っていいのかどうか、疑問を持ち始めたのである。

一方、バングラデシュは、もちろん今でも教育を受けられない子供たちが沢山沢山いる。

首都のストリートチルドレンも10数万人と言われており、彼らももちろん学校には行けてはいない。
そんな中、私立SIZUE小学校の地方での役割はもちろんある。

エリート主義の台頭

しかし、その一方で、首都では、
良い学校に入り良い大学に行き良い職業につくというエリート主義が台頭してきているとのこと。

確かに、2011年2月に訪問した時、ANANTA社という近代的な縫製工場のGAP担当者は、
ダッカ大学の経営学修士号をもったエリートだった。
JILLERさんという彼は、とても素敵で穏やかな人格をもった方だったが。

そして、カポというALAMさんの息子(12才?)も、エリート学校に進学する1人だそうだが、
高等教育を受けることと比例して、
今まで村社会で育まれていたお互い様の気持ちや貧しい者でも他者に分け与える習慣を失ってしまうそうなのである。

村の互酬性

バングラデシュの平野部農村では、もともと互酬性の仕組みがあった。

富めるも者は貧しい者に施しを与えることを行い、
独居老人や寡婦(未亡人)には何らかの援助が自然に行われるようになっていた。
ボクシーシーという物乞いも、実に優雅に行われていたし、
結婚式やお葬式には、直接の縁者でなくても、村人の誰に対してもお食事を出すという風習があった。

富める者は、数年に1回蕩尽(とうじん)することが求められていたのである。

村の子ども達でさえ、カポが都会からやってくれば、ココナッツの実を落として、そのジュースをおもてなししてくれる。
カポの方がよっぽどお金持ちだったり、良い学校に通ったりしていることには、お構い無しなのである。
村の子どもは、自分の方が貧しくても、ホスピタリティーの高い応対をする。それが、もともと自然だからである。

生活教育と人間性

ALAMさんは、息子のカポをなるべく田舎の村に連れていくようにしているという。

学校は勉強を教えてくれるが、人間性まで育んではくれないと判断したからである。

相互扶助と分ち合い、バングラデシュの8割をしめる農村コミュニティーの良さが崩れつつある。
そんな弊害や、BOP(最下層民)対象のビジネスも盛んに行われる中、経済格差は一層大きく広がる状況にある。
おもてなしより、競争の方が大事になってくる社会がやってくる。

日本の国際協力NGOシャプラニール=市民による海外協力の会による、
より貧しい人々・虐げられる人々への支援もあるが、
この国が経済的に大きく変わりつつある弊害を、ALAMさんを通しておぼろげでも、感じた2週間でもあった。

バングラデシュに、また、行こう。
彼の地の、農村コミュニティーに残る互酬性の良さを研究したくなってきた。
バングラデシュは最貧国ではあるが、田舎であればある程、人々の優しさは深くあたたかい。

 

 

 

大学での教育や共育ファシリテーターとして思ったことなど、日々の思索をつづっていきます。 価値の多様性を尊重し、さまざまな意見に出会いたいとも思っています。 お感じになったことは是非コメントをお寄せください。よろしくお願いします。

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