昨日は、「Garment Girls:バングラデシュの衣料工場で働く少女たち」
(ダンヴェール・モカミル監督、2006製作)という、
バングラデシュ製のドキュメンタリー映画を観にいって、
その後、日本でのバングラデシュ通の方達と親交をあたためていたので、日記はお休みしました。
このドキュメンタリーは、もともと伝統あるバングラデシュの繊維産業(ニットと布)に、
ここ10年急激に起こっているグロ-バライゼイション、
つまり、欧米への輸出増大、あるいは欧米・韓国資本の参入と、そこで働く若い女性の大変な日常を描いたものです。
私がわかるところでは、H&Mもバングラデシュに発注している大手企業の1つのようです。
それから、まだ映画には出て来ませんが、日本のユニクロもバングラデシュへの参入をこの夏に決定しました。
TシャツやGパン、そして、ニットの肌着が大量につくられています。
その大量生産の担い手(女性は特に、ミシン縫い)が、農村から都市に出てくる若い女性なのです。
ドキュメンタリーでは、ヌルジャハンという18歳の1人の女性を軸に話が進みました。
父親はもともと土地を持っていた小農民だったのですが、家族が病気になった時に、
その治療費の借金のために土地を手放してしまい、日雇い農民になってしまったようです。
家計は苦しく、他に男兄弟が居ないので、
ヌルジャハンは、女工として、首都ダッカに出て働くことを自分で決心したそうです。
そして、給料の半分を、村の家に仕送りします。
イスラム社会なので、女性は農村では働く道がありません。
子ども時期(~11歳)以上は、上級の学校に行くか、早婚をするかしかないのです。
女性は村の市場で働くこともできません。
小商いにも携われません。
つまり、家計に余裕がないと、遅く結婚したい場合は、
それまでの時間を家庭の中での家事手伝いで過ごすしかなかったのです。
そこへ、外資の入った形での繊維産業の隆盛です。
18世紀イギリスの植民地だった頃から、靴下などのニット産業があったので、それを下地として、
1970年代より、欧米の外国企業が(中国よりも)安い労働力がある国として目をつけたのがバングラデシュだったのです。
現在、約200万人が雇用され、その85%が女性とのこと。
1000万人にいたる人々の生活がこの産業で支えられているといわれています。
(ちなみにバングラデシュの人口は、約1億4000万人)
ヌルジャハンの月給は35ドルです。
残業もめすらしくなく、1日12時間~14時間働きます。
住まいは、スラムのような掘っ建て小屋に、3~4人で間借りして10ドルかかります。
食事は、野菜の炒め物をおかずにしたご飯ですが、1日3食食べても1400~1600カロリーしか摂っていないという調査結果があり、多くの若い女工さんは、慢性的は栄養失調と貧血気味になっているそうです。
ミルクや肉などのたんぱく質の摂取が不足しているのです。
3年から7年働くと、身体が弱ってしまい工場では働けなくなるそうです。
女工の存在は、イスラム社会で女性が社会進出をするという意味では、活路を開く結果になったのですが、労働環境が劣悪です。
ドキュメンタリーの後半では、最低賃金(43ドル)の要求と劣悪な労働環境の改善を求める労働組合の活動や、
バングラデシュ政府の見解、欧米の繊維業界の対応、企業倫理、企業の社会的責任、ドイツやイギリスでの消費者の声などが、取材されて、問題の複雑性を訴えていました。
単純に言ってしまえば、大事なのは、大量生産の安いものを買わないことです。
その安さの中には、誰かに対する誰かによる搾取が隠れているのです。
児童労働の問題も構造的には似ているのですが、弱い立場の人にしわ寄せが行く。
数年ぶりに訪れたバングラデシュの村では、その生活水準は上がっていましたが、
ダッカで働く子どもや親せきからの援助で成り立っているようです。
家族の誰かが病気になったらその治療費をどうするか。
ダッカやシンガポール、ドバイ、日本など、都市に出稼ぎに行っている親戚のある人達だけがセイフティーネットをもっているような社会になりつつあります。
貧富の格差は確実に開いています。
また、日本でも、貧困の問題が顕在化してきています。
一方で、高所得者とそうでない人々の生活の差は極端に広がっています。
誤解を恐れずに書けば、
私は、日本はもっと賢いかたちで全体が貧しくなっていくべきだと思っています。
地産地消や身土不二などを大切にすべきだとも思います。
次の、日記は、ダッカから5時間かかって初めて行った、地方都市ジョソールのお話です。
そこでは、16歳と18歳の女の子の居る家に泊めてもらいました。
(この文章は、青山学院大学ワークショップデザイナー育成プログラムのSNSに書かれた日記を、載録したものです。)