ブログ~多様性の小径~


ワークショップ「思考の可視化」-町田・小学生をもつ保護者のための家庭教育学級

学びあいはやっぱり楽しい!

2000年から続いている、「小学生をもつ保護者のための家庭学級講座」
@東京・町田市生涯学習センター(元・まちだ中央公民館)の講師を、
今年も務めました(2012年11月22日)。

最初12年前に講師のお話をいただいた時は、
教育学のお歴々の先生方に混じって、私なんぞが講師を務めていいのかと、
おひきうけするのを躊躇した事もありましたが、
汐見稔幸先生(東大名誉教授、現・白梅学園大学学長)に励まされ、
受講生同士の学びあいを大切にして、ワークショップ形式を貫いてきました。

5〜6年前からは、受講生がいくつかの教育関係のサークルを立ち上げたり、
講座の企画を自主運営するようになったり、
受講生を主体にした場を続ける企ての成果が形になって現れてきました。

講座の初期には、
バングラデシュの農村生活を知るワークショップ「コビール君ちの家族マップ」を行い、
学校教育で行うことの少ない、参加体験型の学びの楽しさと、
学びの入口に立つことのおもしろさを体験してもらっていました。

講座の中期〜後期には、もっぱら、受講生同士の学び合いを促進することに主眼を置き、
講座の大テーマ「地球時代に生きる子どもを育てる」を受けて、
私が担当する回では、「未来の学校」を構想・提案するワークショップを行なってきました。
ブレイン・ストーミングやダイヤモンド・ランキングで
「未来の学校」をグループで議論して考えることが多かった一方で、
ある年は、対話の後に、個々人で「未来の学校」を絵に現したことがありました。
アフリカのどこかの農村にあるような、
丸い広場に面して小さい教室がサークル状に位置し、
中庭で子たちが本当に楽しく遊んでいる絵を描いた方がいたのが印象に残っています。
ワークショップの原点、「輪になって座ろう」を彷彿とさせました。

 

そして、12年目の今年は、新ネタ、
ハーバード教育大学院の「プロジェクト・ゼロ」で提唱されている
「思考の可視化」のワークショップから、
「See→Think→Wonder」という学習のフレームワークを使って、
過去4回の講座の「ふりかえり」を行いました。

時間管理はストイックに(笑い)、
反対に、内容はジョークも交えてアドリブでと、
講師も参加者もとても楽しめ、
ワークショップとしても完成度の高い満足した出来となりました。

「プログラム曼陀羅」(『ファシリテーション-実践から学ぶスキルとこころ』)の
<起・承・転・結>に従って報告しましょう。

【起】
まず、ワークショップ(参加体験型の学び)については、
中野民夫氏(『ワークショップ-新しい学びと創造の場』)を引き、続いて、

ブラジルの教育学者パウロ・フレイレ(『被抑圧者のための教育』)の
「2つの学び」(「権威のための教育」(知識注入型)vs
「変革のための教育」(アイデア引き出し型))の紹介をし、

次に、日本の学校教育への橋渡しとしては、
OECDの学力到達度調査PISAの結果の分析までを導入としました。

つまり、日本の学校教育では、思考を可視化したり、
児童・生徒が課題について問い(=「なぜ?」)を持ちにくいことを示したのです。

話の脱線としては、
私自身の公立小学校時代の体験として、2年生の時に落ちこぼれだったのですが、
担任の先生に、「お宅の教育方針はユニークなので、私立に転校になさったらどうですか?」と、
勧められてしまい、
母親と、和光小学校や自由学園、玉川小学校を見学しに行ったことを紹介しました。
どの学校も教育実践はすばらしかったけれど、結局、通学時間が長いので、
子どもの私が自分で、「今の小学校でいい・・・・」と、結論づけた話をしました。
子どもに聴く親も親ですが、通えない、と訴える私もすごかったと思います。

【承】
さて、今日のワークショップの位置づけをした後は、
参加者がその場にあることを互いに承認しあう場の設定です。
(次の、2人1組のペアになるための人選の決め手にもなる。)

参加者26人、会場いっぱい、一重の輪になって、○✖の札を挙げて自己紹介をしました。
私が用意した質問は、次のようでした。
(YESなら○を挙げる。質問の途中で、適宜、東から参加者へのインタビューも交える。)

a:町田に住んで10年以上です。
b:子育ての為に、町田に引っ越して来ました。
c:子どもが3人以上います。
d:自分が小学校時代、学校が好きでした。(理由は、お勉強が好き、ということ以外も含む)
e:子育てや家庭教育でちょっと悩んでいます。
f:(今回の講座で知って)異年齢集団の大事さにビビッと来ています。
g:冒険遊び場「プレイ・パーク」が大好きです。

子どもが3人以上居る方が、3分の1以上、子育てベテランさんぞろいでした。
また、子育てで悩んでいる方も多くいらっしゃいましたが、
「このような学びの場に出てきていることで、問題の半分は解決している。」と、私はコメントさせていただきました。

この自己紹介の後、ピンと来た方と2人1組になって、2組(=4人)で1つのテーブル
に座っていただきました。

【転】
いよいよ、メインワークの「思考の可視化:See→Think→Wonder」です。

参加の心得は、
「これまでの4回の講義について、何を学んだか、
事実や考えと感想、ナルホドと思ったことを書き出しますが、
知識というより、どう感じたかを大切にしながら、自分の気づきや発見に敏感になりましょう。
See→Think→Wonder体験を通じて、
学校教育や家庭での教育について、
各自の思い込みをほぐしたり、
大切にしているご自分の価値観に気づいたり、
それらに変化があったりするかもしれないワークショップです。」でした。

ワークの手順の詳細は、別稿に譲りますが、概略は以下のようでした。
(詳細は、本WEBの「これまでの活動」:「DEAR NEWS」(159号)のPDFをご参照

(1)  See:4回の講義で学んだことは何ですか?(20分)
講座の実行員の方がまとめてくださった講義の記録(配布資料)を参照しながら、
印象に残っている「事実」を、ポストイットに書けるだけ書き出し、
ペアになった2人分を一緒に、A3判の紙に貼り出して行く。
貼り出しながら、2人で事実を共有し、意見交換をする。

(2)  Seeで出てきたことで大事な事を1つか2つ、各班から発表する。
(異年齢集団での関係づくりが、育ち上、大事なこととして挙がりました。)

(3)  Think:4回の講義で、考えたことは何ですか?(20分)
講義を聴いて、「何を考えたのか」を、1人でポストイットに書けるだけ書き出し、
新しいA4判の紙に、2人分を一緒に貼り出していく。
(1)と同様に、2人で共有し、意見交換。時間があれば、他のペアの結果を覗きにいっても良い。

(4)  Thinkで出てきたことで、大事なことを1つか2つ、各班から発表する。
(夫婦仲を良くする事が、子どもの育ちにいい影響を与えることだという意見があがありました。)

(5)  Wonder:講義を振り返ったり、See→Thinkとポストイットを書いたりして浮かんだことで、
Wonder(推測したり・類推したり)したことは何ですか?(20分)
ポストイットに書けるだけ書き出し、今度は2組=4人分を新しいA4判の紙に貼りだし、
4人で共有し、意見交換をする。

それをもとに、何か、子どもの教育について、こうしたいというアイデアや提案を生み出してみよう!

(6)  各班から上がった提案は以下のようでした。
*たまには、はみ出してみよう!(おおらかな気持ちをもって)

*(挙がった)キーワードは自分にない事ばかり。まず、自分の自己肯定感を上げよう!

*夫婦仲を良くして、父親と息子の関係づくりに役立てよう。スポーツなど。

*子どもが自由に遊ぶ時間を確保してあげよう。そして、そんな遊びができるコミュニティを作って行こう。

*異年齢で遊ぶ場所を作ろう!→1つの町内会に1つのプレイ・パークを!
(行政の立場からは、新しくプレイ・パークを作るのは大変なので、
今ある児童公園を、プレイ・パーク化するのも1つのやり方だと、東からコメントした。)

*性教育の出張授業をやってもらうよう小学校に働きかける。

*児童公園の使用ルールを緩める。(せめて、ボール遊びができるようにネットを取り付ける。)

*自立できない親が問題。まずは、気づきを大事にして、(子どもより前に)親がまず居場所をみつけて、自立する。

【結】
沈黙の7分(休息&内省の時間)

水色のカードに、
「今まで私は、○○○を〜〜〜と思っていたが、
今、私は、○○○を△▽△▽△と思っていることに気がついた。」を書く。
(このカードは人には見せません。ですから、安心して書き、大事にお持ち帰りください。)

<最後:全体でふりかえり>
質疑応答の時間を6分〜7分持ちました。
感想としては、
「ワークショップ型の講義は初めてだったけれど、とても楽しく、有意義に時間を過ごせました。」
という発言が出ました。

「(作業は)忙しかったけれど、楽しかったですか?」と、お尋ねすると、全員が手を上げて下さいました。

また、「東先生が、小学校の先生に教えることは無いのですか?」
という質問があったので、
ワークショップ型授業の実践を推進している、鎌倉市立F小学校や、
横浜市立H中学校には、継続してゲスト講師として呼んでもらっていて、
教員研修もお引き受けしています。と答えました。

最後に、私の感想としては、
ワークショップは、どのワークも、とにかくオーダーメードに尽きるなと、痛感しました。
今回も、「See→Think→Wonder」という既存の学習のフレームワークを使いましたが、
各アクティビティの組み立てや、場の中での声がけや時間の運用などは、
参加者に合わせて臨機応変、ファシリテーションも変幻自在にするのが良い、と思いました。

以下、参加者の感想の一部を紹介して、終わりとします。

・自分の考え方を文字化し具体化し可視化することで、心のうちが整理できました。なんとなく日々もやもやしていたものが、明確化し、疑問点が確信になりました。

・振り返りの大切さ、他の方と話し合って出る意見がいかに心に響くかを実感しました。「気づき」は本当に大切ですね。「気づき」を自分に根付かせていくことが私の課題です。

・今まで学んだことが、頭の中でもやもやとしてかたまりとなっていましたが、SEE→THINK→WONDERと区切って考えていくと、自分の思いがクリアになり、他の人の意見も刺激になり、楽しい体験でした。

・意見を出し合うことで、同じように考えている人が大勢いるとわかり、とても元気な気持ちになりました。小学生講座はこれからも受講したいです。

・自分以外のもの(人以外も含めて)の言葉をいかに受け入れてこなかったか・・・・たくさん気づきをいただきました。勉強は嫌いでしたが、学ぶ楽しみをやっと知った気がします。

・自分の考えていることを表現することの難しさを改めて、知ることができました。子どもが、自分の意見を言えず、グズグズしている時など、つい、イライラして、怒ってしまっていましたが、親子共々、表現することの「訓練」が必要だと思いました。

・気づき、発見を引き出していただき、ありがとうございます。飛躍していきたい。

・子育てに信念が持てずに悩んでいたのですが、周りにも同じように悩んでいる面が、文章を目で見てわかり、少し、ほっとしました。

・いろいろな考えのお母さんたちとの意見交換がとてもよかったです。たくさんの事に気付くことができました。ありがとうございました。貴重な時間でした。

・「思考の可視化」を知り、いろいろな事に応用したいと思いました。時々思い出し、活用してみたいと思います。また、皆さんの意見も聞けて、とても参考になりました。

・自分の考えをあらためて、考え直すこと、文章にしてみること、他の人と話すこと→可視化によって、再確認できることがたくさんあるなと思いました。進歩的授業ならぬ、家庭での過ごし方を考えてみたいです。

以上

コメント(閉鎖中) (2)

  • すが(菅原 浩子) 13-02-05 (火) 11:19

    ご無沙汰です。HP読ませていただきました。すが、感激です。今、新年度に向けゆーこさん達と月1回集まっています。また秋に町田までご足労をおかけすると思います。よろしくお願いします。

  • Azuu 13-02-09 (土) 1:16

    菅さん、コメントありがとうございます。
    講座の企画運営をして下っている、菅さんやユーコさんが居て下さるから、
    私のワークショップも、テーマに的確に、そして、楽しく場づくりができるのだと思います。2013年の秋も楽しみにしています。日程早めにお知らせくださると助かります。
    木曜日だと大学の会議が入らないのでいいですね。よろしくお願いします。

大学での教育や共育ファシリテーターとして思ったことなど、日々の思索をつづっていきます。 価値の多様性を尊重し、さまざまな意見に出会いたいとも思っています。 お感じになったことは是非コメントをお寄せください。よろしくお願いします。

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